「西の魔女が死んだ」読了。

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

DVD発売の話がどっかにあったので、原作を読んでみた。
一応児童文学というカテゴリだけど、見事なまでに子供の視点で描けているなあと。おとぎ話のような情景描写もそうだし、ゲンジさんのような人を反射的に嫌うのも。物語に出てくる、知らない草木や鉱物の名前に興味を示す子っているよね。あと、スーパーに売ってない様なハーブや果物を使って料理する描写も想像してて楽しいし。
お父さんやゲンジさんが子供心の分からないデリカシーの無い人…の様に描かれているけど、自分の立場としてはこっちに近いのでヒヤリとさせられる。といっても作者自身はきちんと弁えていて、子供目線で書いている一方で、きちんと第三者として大人目線も持っているのかなと。むしろ、大人の理屈を持ち込んで美しいファンタジー世界で閉じさせないところにモダンを感じた。
顛末についてはあざといなあと思いつつも、一方でやはり泣かされた。
あと、「規則正しい生活をしていれば悪魔は来ません」と語っていたけどまさにその通りだと思います。全体的に作者の考えている魔女像を凄くうまく表現できているんじゃないかなと。


後書きで「もっと自然に触れてください」みたいなことが書かれていたけどなあ。おざなりな物質文明批判?みたいな。子供に向けたメッセージとしては、確かに分かるんだけどなあ。職工の末裔としては、人工物にも(工場で大量生産されるような類のものであっても)魂が宿っていると信じているんですが。そもそも、人間と自然を対立項としたくない…というか。


物質文明、の定義について知りたいと思ったけど詳しいWebサイトが無いなあ。ぱっと見、機械頼り、足りないものは買えばいい…みたいな使われ方は実は間違っている?という気になってきたけど。