パコと魔法の絵本

強がって人を寄せ付けないで生きていた爺さんと記憶を一日しか保てない少女、という組み合わせで泣けないわけが無いだろうと思っていたけど、予想外でした。関わっている役者さんみんないい演技をしてました。半分くらいは泣きっぱなしでしたわ。


いい映画見た後に色々書くのは無粋かなあ…なんて思いつつ。でも書かないことには、良かったと思うことすら記憶出来ないダメな脳ミソだからなあ。
あと、良かったあと思うことを整理してくなる困った性分なんで。まっさらで楽しみたい人は読まない方がいいかも。


舞台劇を意識したような芝居なのにCGでの演出が過剰かなあという感じがしたけど、全体的にカオスだったんでしまいには気にならなくなったwセットもなんか面白いよなあと。部屋の中は普通の建物(看護婦のロッカーのある部屋はスプレーで落書きとかまでされている)のに、部屋の外はケバい位にファンタジーで、空も割書きみたいだったりとか。不思議な世界観。


出演者も面白くて、基本は役所広司が渋みの効いた演技で泣かす一方、山内圭也と阿部サダヲがコメディチックに盛り上げているのが上手い。泣ける話も色んなタイプがあるとは思うけれど、笑わせて泣かせられるのにはほんと弱い。
21時からの上映ということもあってお客さんは割と少なかったけど、かなりホットな反応していた。


コメディに関しては、役者の意見を随分入れたんじゃないかなあと思ったりする。スリッパで叩くとか、吉本のお家芸でしょ?で、コメディアンの演技に役所広司が「な、なんなんだ」と言ったりするのもバラエティ番組や他のドラマじゃあり得ないような絡みでなんか面白しみが生まれるんだよなあ。


劇中劇なんかで演奏している包帯人間も気になりますよね。ノコギリをバイオリンの弓で弾くってのも凄い発想。


土屋アンナ妻夫木聡の絡みもいいなあと思ったし、加瀬亮小池栄子の絡みも面白かったし。
ほんといい演技だったと思う。


でもやっぱり役所広司かなあ。悩む人の演技をやらせてこんなに上手い人は居ないんじゃないかと思う。序盤の優しさを持ち合わせていながら強者の仮面を被って人に辛く当たる老人、パコと出会って「パコの心の中に居たいんだ」と悩む老人…。ほんとスクリーンから色々と伝わってくる演技だった。
あ、あの子の心の中に居たいんだって、片思いの恋愛っぽい台詞だよなあなんて思った。つまりはそういう事なのかも知れないけど、どうだろう。「おじさんのこと知っているか?」「全然」というのはかなり突き刺さる会話のような気がするのだが。
他にも、シャープな台詞が他にも色々あったと思う。


久しぶりに邦画でいい物をみたなあって気がした。というか、出演者一人一人のプロフィールまで知りたくなった映画は初めてかも知れない。