「輪違屋糸里」読了。
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新選組って、悪党なのになんか人気あるよなーと。実は私、あんまり好きじゃないんだけど。まあ、歴史の裏表って奴で、劉備と曹操、謙信と信玄みたいな感じで幕末の雄の一つなんだろうなあ。
で、浅田次郎、前にも増してトリッキーな文章が得意になっている感じがする。本文に複数の人物のモノローグが挿入されているんだが、それが一種のフェイクになっていて、読んでいる人を惑わす。これをつかってどんでん返しをバタバタと行うのはなんか斬新な手法に感じた。そして、「憑神」で描いたような侍の格好良さ!尽忠報国の鉄扇を掲げた芹沢鴨が役者の様に格好いい。
一人一人の人物が丁寧に描かれていて、芹沢鴨の暗殺現場に立ち会う一人一人の悲しみを細やかに記していた。勿論創作なのだが、歴史上の謎とされている芹沢鴨の暗殺についてこれだけの分量で描かれているとまるで真実のような気がしてならない。
千年の芸に人並みの愛憎など要らぬ。俗を饗す芸が、俗であってはならぬ。さあればこそ人は、その芸に感動する。恨みも嫉みも妬みも、愛する心すらも要らぬ。芸を修めた身ばかりを矜恃とし、それを授かった恩だけを胸に刻め。聖なるものを習俗の楽しみとして分かち与えること、それだけが島原傾城のつとめだ。
愛憎持つ自分の技が人間(じんかん)の芸だとすれば、極みを得た人の芸はまさに天の技なんだろうなあ。天と地ほど開きがある、とはこうことなんだろうなあ。